「生化学・分子生物学演習」の使い方を考える

Life Science
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生化学・分子生物学演習 第2版 (猪飼篤・野島博、東京化学同人、2011年)という問題集があります。

以前の記事で少しご紹介した本です。

今回は、この生化学・分子生物学演習の大学院入試対策としての使い方をもう少し考察します。

ただ、対象となる大学院は生命科学系の大学院とします(もちろん、化学系で生化学の大学院・農学系の大学院でも有用だと思います)。

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内容紹介

生化学・分子生物学演習 第2版は、東京化学同人から2011年第1刷が出された書籍で、貴重な分子生物学の問題集です。


生化学・分子生物学演習

生化学の演習本はちらほら見かけますが、分子生物学・細胞生物学を扱っている書籍はほとんどないと思われます(セルのproblems bookなど英語版だとありますが)。

目次を見ると、

  1. 生体物質の化学
  2. 生化学実験法とその基礎
  3. 酵素反応
  4. 代謝
  5. 分子生物学
  6. 細胞生物学
  7. 遺伝子工学・分子医学
  8. 分子発生学
  9. 免疫
  10. 英語問題

となっています。かなり広い範囲が収録されていますね。ちなみにページ数は334ページです。

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出題形式は?

問題集なので、どのような問題が並んでいるのか気になる方もいらっしゃると思うので、ここからは具体的にどのような問題が並んでいるのかを見ていきたいと思います。

収録されている問題形式としては、①穴埋め、②一致問題、③図表問題(考察系)④和訳英訳問題(10章英語問題のみ)といったタイプが挙げられます。では、それぞれを見ていきましょう。

穴埋め問題

基本的な知識を覚えるための問題として、穴埋め問題が多数収録されています。

例えば、酵素反応速度論の基礎としてこのような問題が掲載されています。

教科書レベルの内容ですね。酵素反応のフィードバック阻害の例として解糖系の律速の話をするのは理解が深まって良いと思います。

一致問題

一致問題、文章の内容に当てはまる語句を選ぶ問題です。これも、基礎的な知識を確認するための問題だと考えられます。

例えば、細胞生物学の分野では以下のような問題が掲載されていました。

オルガネラの機能の問題ですね。これも基礎的な問題だと思います。しかし、意外とごちゃごちゃに覚えてしまうことが多いと思うので、知識チェックには良いと思います。

図表問題

これは、実験結果の図・表から考察するタイプの問題や、構造式・反応系などが図として記されているタイプの問題ですね。生化学ということで反応式・構造式を書かされる問題もあります。代謝の分野では解糖系・クエン酸回路・β酸化・アミノ酸代謝などの構造式を問う問題も登場します。

例えば遺伝子工学の章では、電気泳動の結果から制限酵素地図を考察させる問題がありました。

有名な制限酵素であるEcoRIやHindIIIの問題ですね。RIラベルしたものとEtBr染色でみたものの泳動結果の違いから制限酵素でどこが切断されるかを考える問題です。完全消化と部分消化の違いを考えるのがポイントだと思います。

このほかにも、とある物質の構造式を見せてその物質の名称・機能を答えさせる問題や、シグナル伝達ではカスケード反応の図を見せて名称を答えさせる問題などが掲載されています。

英訳和訳問題

第10章の英語問題では、生化学・分子生物学・細胞生物学などに登場する語句・文章についての和訳・英訳・読解問題が掲載されています。問題量としては少し少な目ですが、クオリティは良好です。

英訳問題は以下のような問題です。

専門用語はともかく、構文的にはわかりやすい英語で書いてありますね。和訳問題を考える上で参考にできそうです。惜しむらくは、解答例が一つしかないことでしょうか。ただ、英作文の参考書ではないのでしょうがないと思いますが…。

和訳問題は、ワンセンテンスの和訳からある程度まとまった長さの文章の和訳まで結構いろいろな問題が掲載されています。

画像のように、英問英答もあるので、結構参考になるのではないでしょうか。

因みに、第1章~第9章の章末には、英語も覚えようという専門用語をまとめたコラムもあります。単語を整理するときに役立ちそうですね。

また、問題の中にも英語で記されている用語もあります。この辺も拾っていくと良いのではないでしょうか。

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では、どのように使うのか?

上述の通り、様々な出題形式の問題が掲載されているため、様々なニーズにこたえることができると思います。

今回は、自分がオススメする使い方を紹介しようと思います。

まず解いてみる

以前の記事でも述べた通り、院試の準備をするにあたって、教科書(エッセンシャルやセル、理系総合のための生命科学など)を読むと思います。

しかし、ただ読むだけではなかなか知識は定着しにくいと思います。そこで、復習を兼ねてこの本で問題演習してみるのはどうでしょうか。

基礎知識を確認するための穴埋め問題や選択問題があるので、演習量はそこそこ確保できると思います。

また、複数の問題で同じ話題を扱っているので、繰り返しその話題に触れることで、さらに知識を定着させやすくなっていると思います。例えば解糖系だけで3問あり、構造式を答えさせる問題、化合物の名称を答えさせる問題などバリエーション豊かです。

ただ、2章の生化学実験法とその基礎はあまり解かなくても良いと思います。理由は、生化学の分析手法(NMRなど)の問題が多く、正直生命科学系の院試での出題頻度は限りなく低いと思われるからです。もちろん、化学系の大学院で生化学系の研究室を志望する際は解く必要があると思います。

考察問題にトライしてみる

基礎知識を身に着けた後は、志望校の過去問を参照してみると良いと思います。そこで出題傾向を把握したら、頻出分野の考察問題をこの問題集で解いてみると良いでしょう。

様々な分野の考察問題が掲載されているので、演習をさらに積むことができると思います。

英語が必要な時は英語問題も

院試においてTOEICやTOEFLではなく、英語のペーパーテストがある場合は、専門分野の英文が出る可能性が高いと思います。英文自体はPubmedやGoogle scholarなどで検索すればたくさん見つけることができますが、問題形式となるとなかなか入手するのが難しいと思います。

この本には少数ですが英語問題が掲載されているので、院試の英語問題対策にも有用だと思われます。

また、生命科学に特化した英単語集はなかなかない(羊土社からライフサイエンス英語シリーズがありますが、どちらかというと医学よりの語彙が多い気がします)ので、この本は使えると思います。先述の「英語も覚えよう」や英語問題も使えるでしょう。

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この本のデメリット

このように、大学院入試対策として、この本は結構有用だと思います。

ただ、デメリットとしては、2011年に出版された書籍なので、昨今の最新の話題は掲載されていません。例えば、iPS細胞は掲載されていますが、ゲノム編集・CRISPR-Cas9は掲載されていません。

また、割と広く浅く載っている本なので、マニアックなことは載っていません。例えば、DNA修復について、ピリミジンダイマーの修復については載っていますが、DNA二本鎖切断(DSB)の修復については載っていません。過去問を見て、結構マニアックな知識が要求される場合には、この本のみでは対処できないことが考えられます。

そのような場合、自分は別の本から図や表を持ってきてふせんのような形でこの本に貼っていました。

このような感じですね。個人的には、細胞の分子生物学の第5版は図表を収めたDVDが付録でついているのでオススメです。

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まとめ

というわけで、今回は大学院入試における生化学・分子生物学演習の使い方についてまとめました。

あくまでも個人の意見なので、適宜アレンジしてくださると良いと思います。

 

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